会長挨拶
テーマ:麻酔科学の未来にむけて
中島 芳樹
(浜松医科大学 麻酔・蘇生学講座)
この度、東海・北陸支部の第21回大会長を拝命しました中島芳樹と申します。大会のテーマは「麻酔科学の未来にむけて」としました。国産のコロナウイルスに対する新薬の開発のニュースもあり、現地で開催することが可能と信じて場所は当初東海・北陸の会員の皆様が集まりやすい名古屋を考えておりましたが、諸般の事情で浜松となりました。浜松駅からは徒歩で数分の距離にあり雨にも濡れずに移動できることもあって利便性は悪くないと考えております。
さて、私が麻酔科医になって35年が経過しました。研修当時の人工呼吸器も満足に揃わないタイル張りの手術室で行うハロタンとサクシニルコリンの麻酔は山盛りのモニターとハイテク機器に溢れた環境で安全かつ快適なものとなりました。薬剤も強力な力価と短時間作用性が両立した鎮痛薬、鎮静薬が次々に登場した一方、次世代となるような新しい薬剤は開発がほとんど行われていない現状があります。手術は内視鏡の発達もあってどんどん低侵襲化が進んでいますが、消化器科や循環器科では手技が外科的なものに近づき、その境界が曖昧になってきており、手術室外での麻酔・鎮静の依頼も多くなりました。また待った無しの温暖化対策や環境破壊など地球規模で考えなくてはならない現在、いくつかの麻酔薬はその使用の是非が欧米諸国では真剣に議論されています。そのほかにも術後の認知機能やがん患者における長期予後への影響、手術室から出る廃棄物の削減など考えなくてはならない問題は山積しています。今後、麻酔科学はどこに向かうのか、を提示し、議論できるような内容を考えています。実りある会にするためにもぜひ皆様のご参加を心よりお待ちしたいと思います。