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会長挨拶

テーマ:五感を活かした全身管理

小山 薫
(埼玉医科大学総合医療センター)

関東甲信越・東京支部第63回合同学術集会の会長を拝命した、埼玉医科大学総合医療センター麻酔科の小山です。本学術集会は2023年9月2日に京王プラザホテル(新宿)での開催を予定しています。コロナ禍の影響で多くの学会がweb開催となりましたが、活発な意見交換など、現地開催の利点を皆様と共有できればと思います。

自分が麻酔科に入局した1984年当時、麻酔科の教科書はほとんどなく、医局で作成された小冊子、「麻酔科研修のために」を繰り返し読んだ記憶があります。1985年の当院開設時に麻酔科初代教授の川添太郎先生が本小冊子を導入、当院で独自に版を重ね現在第6.4.4版となります。非常に実践的で到達目的も明確であり研修医からの評判も良い内容ですが、川添太郎先生の巻頭言の言葉は心に響きます。

「近年、周術期麻酔管理におけるモニター類の進歩は著しいが、五感を活用した麻酔管理を忘れてはならない。すなわち、眼で呼吸パターン、チアノーゼの有無、術野や麻酔器などを診て、耳で胸部や蛇管音を聴き、手で末梢温、脈拍を触れ、麻酔器のバッグを押して肺のコンプライアンス、気道分泌物を感じ、時には麻酔ガスを嗅いで気化器や麻酔回路の状態を判断することの重要性は今も変わらないのである」、と川添先生は記されています。当院開設から30年以上たった今でも立派に通用する内容です。

誰しもが安全に実践できる麻酔薬、麻酔器、モニター等の進歩の重要性を否定する訳ではありませんが、この巻頭言に相当する場面に遭遇する機会も少なからずあるのではないでしょうか?

支部学術集会の特徴を活用、多くの貴重な症例報告を共有し明日からの臨床に活かす中で、<五感を活用した全身管理>という点からも考察していただければ幸いです。